「もっと練習すれば上手くなるよ」とか「もっと努力するれば速くなるよ」とか、大人たちは大抵そういうことを言ってくるわけですが、誰よりもたくさんの練習をした人が、なかなか日の目を見ずに苦しんでいる姿というのを目の当たりにすると、どうやら真実は別のところにあるのではないかしらん、と眉に唾をつけてみたりするわけです。
ぼくらは練習をして、上達の階段を登っていきます。でもこのまま練習を繰り返して、一体どこまで行けるのかと少し不安になったりします。実はとても上手な人や、すごく速い人というのは、今ぼくらが登っているこの階段の先にはいません。この上達の階段をせっせせっせと登って行っても、彼らのいる場所には辿り着けないのです。
彼らは雲の上にいる。そしてこの階段は雲の上までは繋がっていない。だから雲の上に行くには、エイヤー!と、ひとっ飛びするしかないのです。
両手を挙げて、とぉぅ!
”両手を挙げる” とぼくらは誰でも飛べるのです。両手を挙げると背中が緩み、肩甲骨が自由になります。肩甲骨はカラダに備わった翼です。肩甲骨が自由になると、カラダはより自由自在に動かせるようになります。ただ、ぼくらのカラダは平穏な日常でだいぶなまってしまっています。丸まったポスターみたいに、伸ばしたてもまたすぐに丸まってしまう。
ではどうするか。ぶら下がります。丸まったポスターを逆側に丸めて真っ直ぐにするように、ぶら下がることで硬くなった背中をほぐしてあげる。そうすると背中は徐々に柔らかくなり、錆び付いて動かなくなった翼も次第に滑らかに動くようになってきます。
ずいぶん前に、ぶら下がり健康器がブームになったことがありました。ぶら下がると腰痛や首のコリが改善する。冷え性が治る。免疫力が上がる。でもそれだけではないのです。ぶら下がると、翼を使えるようになる。すると、上達の階段が途切れていても、そこから上に飛び立てるのです。