市の中心部から少し離れた自然広がるのどかな町。そこに小さな少年サッカークラブがあります。特段強いチームではありません。むしろなかなか勝てない。でも不思議なことに、毎年とても素晴らしい選手が出てくるのです。そのチームの中心だった子供たちは、どこのチームに行ってもみんな活躍する。そんなチームがあります。
なんで小さなサッカークラブから、次々に素晴らしい選手が出てくるのか。何か特別な練習方法でもあるのだろうか。そんな謎を解くため、練習を覗かせてもらいました。
期待を胸にグラウンドに目を配ると、見えてくるのは ”なんてことない” 練習風景。特別なことは何一つない。どこのチームでもやっているような、そんなよくある練習だったのです。ただ、しばらくしてあることに気がつきました。それは、子供たちの笑顔が多いということ。
なるほど、指導者が威張っていない!強いチームでも弱いチームでも、大人が偉そうな雰囲気を漂わせていることはよくあります。たとえ怒鳴っていなくても、笑顔でいても、威圧的な空気をまとった大人はいたるところにいます。
でもこのチームの大人たちにはそれがないのです。ピリピリとした空気ではなく、落ち着いた雰囲気がグラウンド全体を包み込んでいる。もちろん子供だから、時にふざけすぎて怒られたり、注意されることもあります。それでもやっぱりグラウンドには優しい空気が漂っていて、何かほっこりとした、居心地のいい空間がそこにはあったのです。
またこのチームには、もう一つ大きな特徴がありました。それは試合に来た子供たちが、『全員ほぼ平等に』試合に出るということ。とても上手で中心的な選手が、”前半だけしか出ない”、”後半だけしか出ない”、そういうことがしょっちゅうあるのです。
コーチの方々には、ここに至るまでの葛藤があったようです。
子供達を勝たせたい。でも大人が手を加えることによって失われるものもある。そんな試行錯誤の末、『子供達を選別することをやめた』。サッカーの能力で子供達をひいきしない。そういう方向に舵を切ったら、子供達がより輝き出した。才能が次々と開花した。
そういうお話でした。
才能は、そこに漂う空気によって育まれる。「何を学ぶか」よりも「どういう場所にいたか」。上達の道は、居心地の良さと結びついていたのです。
あなたの居心地のいい場所はどこですか。